Universal Audio: その歴史

ユニバーサルオーディオ社(以下"UA")は、1958年、故ビル・パットナムSr. によって設立されました。その後半世紀以上に渡り、その名も会社も、革命的な録音機材の代名詞として用いられるようになりました。同氏は、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール、レイ・チャールズのお気に入りエンジニアとして活躍しただけでなく、現代録音史の父として、あるいは偉大なイノベーターとして君臨しています。同氏が設計した伝説的なスタジオや録音機材は、いまだに色褪せず現役で活躍しているのです。

その功績を具体的に挙げると、パットナム氏は現代の録音用コンソール、マルチバンドオーディオ EQ デバイス、オーディオブースを考案。さらに、人工的なリバーブを商用録音に適用した最初の録音技術者だったのです。親友でもあったレスポール氏と共に、パットナム本人は、ステレオ録音の初期の時代に活躍した功労者だったのです。

パットナム氏は、生粋の起業家でもあり、経歴を辿るとオーディオ機器製造会社を3社設立しています:Universal Audio 社、Studio Electronics 社、UREI 社がそれに当たります。それぞれの社名で、普遍的な名機 LA-2A、1176 コンプレッサー、610 チューブコンソールを世に送り込み、こうした機材は数十年を経た現代においても広く使用されています。特に610チューブコンソールは、シナトラからビーチ・ボーイズ、さらにヴァンヘイレンIに至るまで、録音機器としてメインで使用され、オーディオ史において最も愛された機材の一つでもあります。

その生涯に渡って音楽のパイオニアであり続けたビル・パットナムSr.は、シカゴ、ハリウッド、サンフランシスコに著名な録音スタジオを設立しました。ここから数々の名作が生み出されたのです。スタジオは、新世代のプロデューサーやエンジニアを育成すると共に、数々のクリエイティブな発見とイノベーションが生み出される場となりました。パットナムSr.の業績については、同僚であり、有名なエンジニアでもあるブルース・スウィーディアン (クインシー・ジョーンズ、ミック・ジャガー、ポール・マッカートニー、マイケル・ジャクソン) が、以下のように語っています:

「ビル・パットナムは、まさに "現代レコーディングの父" と呼べる人物だよ。今では当たり前になった録音用コンソールや各機材のレイアウトや種々の機能、コンソールの設計からキューのセンド、エコーのリターン、マルチトラックスイッチに至るまで、すべてビルの豊かな想像力の恩恵に与っているのさ」

パットナム氏は 1989年、他界しました。2000 年には彼が音楽業界に残した技術的な業績に対してグラミー賞が贈られました。Universal Audio 社の創設者ビル・パットナムSr.に関する詳細情報は Mix マガジンに掲載された記事を参照してください: http://mixonline.com/recording/business/audio_bill_putnam_2/

1999年、会社の再建

UA 社は、ビルの息子達、ジェームズ・パットナム、ビル・パットナムJr.によって、1999年に再建されました。当時、彼らには二つの夢がありました:父親譲りの伝統的クラシックアナロク録音機器を忠実に再現すること;新規に開発されるデジタル録音機材の設計には、ビンテージアナログ技術のサウンドとスピリットを織り込むこと。ビルJr. が "UA Part II" で詳しく述べることになりますが、実際には想像以上の幸運がついて回ったのです。

音楽業界に育てられたビル・パットナムJr.とジェームズ(ジム)・パットナムは、自らの生涯を音楽業界に捧げる決心をしました。ツアー主体のミュージシャンでもあり、録音技師でもあるジムと、年上の兄弟スコット(南カリフォルニアにあるスタジオの設計者)は、当初ビルSr.の足跡を辿ることで精一杯でした。ビルJr.は、若干遠回りして、技術系の会社で実績を重ねた後、スタンフォード大の電気工学博士号を取得しました。また、ビルJr.が信号処理技術を専門とし、ミュージック&アコースティックコンピューターリサーチセンター(CCRMA)の仕事に深く関与するようになったのも、スタンフォード大在学中の出来事でした。さらにビルJr.が、当該分野における最高のスタッフをまとめ上げたのも、同じくスタンフォード大在学中だったのです- 彼らは、今日の Universal Audio 社の技術開発の屋台骨となっています。

1999年、Universal Audio 社再建の切っ掛けとなった出来事は、予期せず起こった些細なものでした。ビルJr.によると、1989年、ビルSr.が他界した後、彼とジムは、父親の仕事場や倉庫を整理しなければなりませんでした。とても骨の折れる仕事です。ビルSr.の古い試験装置、パーツ箱、コンソールの小物類、本体の半分が取り外された 1176 コンプレッサー等を片付けている時、ジムは偶然、父親が記した古い設計ノートを見つけたのです。それは、父親が解決してきた様々な技術的問題への解決方法が記された、まさに宝の地図だったのです。その日、彼らは父親のノートをむさぼるように読み、夜を明かしました。Universal Audio の遺した旧製品群の再生を決意したのはその瞬間でした。

あっという間に10年が過ぎ、今では80人の従業員を抱える会社となり、UA は世界中に数多の新しい顧客を持っています。同社は、米国カリフォルニア州シリコンバレー近く、スコッツバレーに本部を置いています。ここではクラシックなアナログ機器が1ユニットずつ手作業で製造されています。唯一無二のクラシックアナログサウンドとパフォーマンスを実現できるのであれば、我々は努力や労力を惜しみません。実際、我々のゴールは、何十年も昔に製造され、メンテナンスの行き届いた旧式の Universal Audio ユニットと全く同じように素敵なサウンドを奏でる機材を現代に蘇らせることなのです。

もちろん、アナログユニットに関する部分だけでは、まだ物語の半分です。UA 社は、世界有数の DSP エンジニア、デジタルモデリング技術者を抱え、数々の受賞歴を誇る UAD パワードプラグインプラットフォームを開発しています。これは本物のアナログエミュレーションを実現した業界有数のプラグインです。UAD プラグインにアナログ機器の温かさや豊かな倍音を加えるため、我々の DSP エンジニアは、オリジナル機器のアナログハードウェアメーカーの設計者達(実機の回路図、実物ユニット、経験を積んだ耳)と日夜苦楽を共にしているのです。

ソフトウェア/ハードウェアを含むすべての UA 製品は、50年にわたるイノベーション、比類のない品質、最新技術への情熱に支えられています。皆様からの支援に感謝しつつ。